『血の婚礼』は、スペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが、実際の事件をもとに執筆し、ロルカの三大悲劇のひとつとして知られている傑作戯曲。互いの家族の期待を背負いながら結婚式を迎えようとしている一組の男女のもとに花嫁の昔の恋人が現れ、運命の歯車が狂い始めます。沈黙を破って噴き出す、言葉を超えた血の衝動。伝統と因習に縛られた男たちの誇り、女たちの切なる戦い。

演出は、日本演劇界の巨匠・栗山民也が手掛け、情熱的な魂のドラマを創りあげます。
― あらすじ ―

灼熱の大地スペイン、アンダルシア。

20年前、ある家族の父親と長兄がフェリクス一族に殺された。母親(秋山菜津子)は暴力への憎しみを全身に宿しながら残った息子(宮崎秋人)を育て上げた。

その一人息子が成長し、いよいよ結婚相手を決めても、母親の心が晴れることはない。息子が選んだ花嫁(伊東蒼)は、事もあろうにフェリクス一族のレオナルド(中山優馬)と恋人関係だったという噂があるからだ。

今、レオナルドには妻(岡本玲)と子どもがいる、しかし幸福な暮らしではなかった。花婿と花嫁の婚礼は、花嫁の父(谷田歩)の家で開かれた。早朝、レオナルドが花嫁を尋ね、いまだ燃え盛る熱情を告げる。

花嫁は動揺を隠して婚礼の一日を過ごすが、祝宴の真っ最中、レオナルドとともに姿を消してしまう。皆がそれに気づき、大騒動と化す婚礼。花婿は、花嫁とレオナルドを追いかける。

森のなか、「月」が若者たちを照らし出し、「死」が囁きかける。そして、悲劇が繰り返される。

― コメント ―

演出:栗山民也

もうだいぶ前のこと、その時住んでいたロンドンの震える冬を抜け出し、暖かなスペインへ向かった。マドリッドに着いてからは列車で東海岸をゆっくりと2週間かけて南下、目的地であるアンダルシアを目指した。
その地にあるアルバイシンの丘を登ると、ただ透明な青色だけの空の下、小さな美術館と小さな野外劇場がポツンとあった。偶然にもその夜、その劇場ではロルカの「ジプシー歌集」をもとにした音楽劇をやっていて、彼の地グラナダに来た目的が叶った。
そのグラナダで生まれたガルシア・ロルカの「血の婚礼」を、今回やっと上演することができる。あの丘の上のあの喉から絞り出すような熱く乾いた声、あの力強く踏み鳴らし続けるステップのリズム、そしてあの劇場をギュッと包み込んだ、むせ返るような濃い人間たちの欲望の輪を思いながら、心躍るままに創ろうと思う。ロルカに出会いたい、その一心で。

主演:中山優馬

「血の婚礼」に出演させて頂ける事、また栗山さんの作品に出られる事、大変嬉しく思います。それと同時に、「血の婚礼」という偉大な作品に巡り合わせて貰った事に、感謝と共に重圧も感じています。
現代の社会においては決して許される事のないであろう物語。僕が演じさせて頂くレオナルドは、強くも卑怯で愛に溢れた男。多くを失い、多くを手に入れた男なのだと思います。そんな彼をたくさん愛し、表現したいと思います。僕なんかの小細工が通用する役ではありませんので、少しの衝動も逃さず、文字通り全身全霊で演じ切りたいと思います。
胸の引き裂かれる様な熱い愛を、劇場で見届けて下さい。